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『ビデオドローム』 ★★★☆☆ ディスクの時代になってもこの悪夢は終わらない [映画:ホラー・ミステリー・サスペンス]

このおぞましさは幻覚か?それとも現実か?
禁断のビデオに囚われてしまったのは、観ているあなたなのかもしれない!


ビデオドローム [ユニバーサル・セレクション] (初回生産限定)

ビデオドローム
■STAFF■
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
特殊メイク効果デザイナー: リック・ベイカー
■CAST■
マックス: ジェームズ・ウッズ
ニッキー: デボラ・ハリー


 
 1982年製作のこの映画のストーリーに欠かせないキー・ツールは、「ビデオ(テープ)」。
 ディスクが主流の昨今では、「・・・ビデオ?」なんて少々時代遅れのように思う向きもあるかも。
 (だって、この映画のジャンルは「SFホラー」らしいですから。)

 でも、古い新しいにかかわらず、この「ビデオ」というところがミソのようにも思えます。
 クローネンバーグ 監督独特の、グロテスクで、ある種卑猥とも言えるシュールな表現が創造する世界にマッチしているような。
 (以下、一部描写についてのネタバレがありますのでご注意ください。)


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 ラスト近くに、主人公マックスの手が、握った拳銃と一体化すべく変容していく場面があります。
 例えば、キー・ツールに「ディスク」をおいたとして、この場面の描写を想像してみると・・・
 勝手な想像ですが、これは肉体の一部である「手」の方が、無機質で硬質なスティール系の「拳銃」に取り込まれていく、つまり「ボディ」が「マシーン」に変容するようなイメージが浮かびます。
 しかし映画の実際のこの場面では、握られた「拳銃」の方が、まるで宿主にしっかりと根付く寄生生物のように皮膚を破って取り付き、そして擬態するかのように「手」に変容していくのです。
 しかももはや手の役割はなさず、見た目ドロドロの肉の塊(ゲロ~;)で、でもしっかりバンバン発砲はできるという・・・
 この監督の真骨頂とも言えるここら辺りの描写は、やっぱり「ディスク」より「ビデオ」というツールのイメージの要素との方が合っているように感じました。
 (なんでこの場面を特に取り上げるかと言うと・・・一番印象的だったから^^;)

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 「禁断のビデオ」そのものは、特別ショッキングな内容ではありません。
 なんで「禁断」なのかは、ストーリーの展開とともに分かってきます。
 ニッキー役の デボラ・ハリー (ロックグループ ブロンディ のヴォーカル)は、相変わらずヤバそうな雰囲気。
 現実と幻覚の境界線が次第に消滅していく主人公に、いつの間にか自分の感覚も重ねて映画の世界に入っていけたなら、なかなかに面白いと思います。 

 暴力やポルノが蔓延するTV(映像)界を、自らシニカルに捉えるのみならず、社会にもたらす影響や人間自体を蝕んでいく問題を、観る人に是非を問うでもなく、独自の世界でグロく提示している『ビデオドローム』。
 一般受けはしなかったようですが、アーティストや業界の有名どころの面々にはカルト的人気を博したことで、ジワジワと知名度が上がったという、クローネンバーグ監督の代表作の一つです。


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